一生の担任エッセイ
Vol.07
おうちの人だって1年生
この仕事を始めたきっかけのひとつに「子育てが初めてのおうちの人も助けたい」との思いがありました。
私自身は体も小さく丈夫でもなく、子どもの頃から目立たない「普通が唯一の個性」といった人間でした。
しかし、あることがきっかけで親戚もいない知らない土地で、たった1人で子どもを育てなければいけない立場となってしまったのです。
子育ての究極の目標が「自分がいなくなっても1人で人生を切り開いていくこと」だとしたら、私たちが子どもたちに授けられるものは何か。
私はまず、体の丈夫さを考えました。
過剰な負荷はかけず、何かしら体を動かしそのメンテナンスを自分でやっていけること。
次に、目標をやり遂げられる精神力。
意志が強ければ、物事を達成できることが圧倒的に多くなります。
そして、社会性。礼儀とか、公共心とかいうものと、人に対する想像力。
自分も周囲も大切にし気持ちよく生きていけることは、何より大切なことだと考えました。
人は、人の中で生きていくのですから。
そして教育。お金の大切さも同時進行。
勉強ができるようになることで、将来選べる仕事や住む場所が広がるということを、子どもたちに伝えなければいけないと思ったのです。
最後に、芸術も付け加えたいと思います。
人生を豊かにするのは、実はそういうものであったりします。
仕事をしながら子を育てる人は、当時の社会では珍しかったと思います。
やむを得ないとはいえ、自分がその先輩としてあったならおうちの人を助けたい。
「おうちの人も1年生」
その思いが常に、いつまでも私の中に流れています。
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